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2016.12.18 下北沢Circus
  ゲスト:猿田彦珈琲 代表取締役  大塚朝之

小松(以下、こ):食事タイムも終わりまして、後編に行ってみましょうか!

大塚(以下、お):突然私事の話をしていんですけどいいですか?

こ:はい。ぜひ!!なんでしょう?

お:突然なんですけど、昔にあきさんがSONYか何かのコンペみたいなやつに

応募してることなかったですっけ?結果はどうなったかわからないやつですけど…

松浦(以下、ま):そんなのあったね。

お:僕はそのことがすごい印象があって。あきさんみたいな人でもコンペに出したりするんだ!と思って。悪い言い方になってしまうんですけど、そういうのにどれくらい本気で挑むかって知らないじゃないですか。その頃のあきさんは超かっこいい音楽を作ってるわけで。お世辞抜きで、すごいハイクオリティんなものがたくさんだったわけですよ。

それなのに、そこまでやらなきゃいけないんだってことと、あきさんみたいに前線の人でもダメな時はダメなんだってことをすごく感じたんです。他に仕事があるから、はいはいって切り替えて次のことをやってたと思うんですけど、人生ってそういうものなんだってすごく学ばせていただいたワンシーンでした。

ま:そうなんだ

お:だって、第一線で活動してるってことがどういうことかってシーンを目の当たりにすることってないじゃないですか。俳優さんだって次の作品が決まっていたとしても、役作りとかいろいろ含めて今いる現場が終わるまでひとつのことしか考えないと思うんですよ。あきさんの場合は、ひとつの作品をやりながらも、実はストックがいくつかあっていろいろ同時進行していたり、そのひとつひとつに対してディティール詰めたり、細かい作業をしたりしていて。いちいち落ち込んでる場合じゃないんだなってことを感じたので、そのことは珈琲屋さんをしている今でもすごく役立ってます。

こ:そんなことがあったんですねー

お:今、僕らもコンペみたいなのがあって、1年とか2年とか先の話だったりするんです。それこそ昨日も話し合っていたし今日もこのあと話すんですけど、それがどういう結果になってどう決まるかなんて僕らでも分からないものだったりするんですよ。でも、悪い言い方するとなんで僕らの珈琲屋に仕事がくるのかなって思った時に、そういうもしものためにひとつひとつちゃんと僕らのやれる限りのことはしたいと思って話し合いをしてるからだろうなって思うんですよ。だから、あきさんのコンペの話にも通ずるものがあるなってすごく勉強になったんです。

ま:それはなんかいい話だねー!

こ:いや、2人とも素敵な話ですね!

ま:いやいや、僕じゃなくて大塚君が、だよね

お:ありがとうございます。でも、あとから知人からコンペがダメだったかもって話を聞いたけどもう次の仕事に取り組んでて、「あー…プロってこういうことなんだな」って思いましたね。

ま:あのね、すんごい後悔することがあるとしたら、あそこが気になったのに直さなかったなぁってことはかなぁ。

こ:そういうこともあるんですね

ま:うん、そこを直さなかったせいでダメだったかどうかなんて分からないんだけどね。ただ、時間がなかったから直さなかったってことがあったとしたらすっごい気がかりで後悔するんだよね。もちろん生涯そんなことがなかったわけじゃないんだけど、いくつかはあるわけよ。稀にね。その時の自分のなんていうかなぁ…後悔具合っていうかな。半端ないわけよ。それが嫌なんだけど、しばらくは「あれはなー…直しておけばよかったのにな…」って思うことはあるよ。しつこく思い出すんだよね。だから極力なんでも直すようにしてるよね。

お:そういう風に考えていて、でも次に進んでるっていう習慣性も含めて、やっぱり仕事に繋がっていくんだなって

ま:そうだね。どんどん繋がっていくね。でも、全員が全員そうかっていうと違うわけで、仕事だから誠意をもってやってるとかって基準じゃない時だってあるんだよね。自分が良ければいいって時だってあるよね。だけど良ければいいってことだけでやっていくと意外と自分の身にならないんだよ。ちゃんとひとつひとつ丁寧にやっていくと手応えがあるから、いろんなことが自分の経験になるんだよね。例えば、クライアントがそれでいいってところだけだとやりこなしたってだけになっちゃって自分の糧にならなかったりするもんね。

お:そうですねー。僕が自分でいうのもなんですが、僕らのお店は接客がいいと評判のお店なんですよ。

ま:すごくいいよね!その話はぜひしたかったんだ!

お:ありがとうございます!SNSとかで「接客なら猿田彦珈琲だよね」って言われてたりするんです。

こ:そうなんですね!たしかに僕もすごくいいなって思ってました

お:ありがとうございます!それで、僕らのお店って敢えてスターバックスの隣に会ったりするんですけど。それって、もちろん自分がスタバが大好きっていう理由もあるんですけどね、スタバの横に店舗があってもやっていけるならいい基準としてずっとやっていけるだろうとおもってなんですよ。申し訳なんですけど、珈琲も負けるわけにはいかないんですけど、接客なら猿田彦だよねってことになれば勝ちやすくなるじゃないですか。どういうふうにお店をやっていくかって考えた時に、スタバの近くじゃないほうがやりやすいとは思うんですけどやっぱり敢えてチャレンジしていこうと思っています。

あれ、なんの話をしたかったんだっけ?(笑)

ま&こ:えっと…(笑)

お:あっ、そうだ!いい接客をするのひとつに、こちらから話しかけたりキャッチーな感じになるように教育してるんですけど。ただ話しかければいいんだ、くらいにしか思わないで接客する人もいるんですよねー

ま:あぁ…なるほどね

お:相手のことを考えないんですよね。それをやると、例えば10人中9人は相手のことを考えていい感じにできましたってなったとしても1人がそうじゃないことをしていると、相手は10人中6人くらいしか感じとってもらえないんです。要は他の4人には伝わらず、気持ちのロスになってしまうわけで。

こ:そうですよね…

お:それに似たような体験をこないだ偶然したんです。僕お酒があまり飲めないんですけど、ちょっとしたワインのいいお店に連れてってもらったんですけど、そこのバーテンダーが面白いことを言ってて。僕が行った時にたまたま別の従業員がフォークを落としちゃって、そういう時ってまわりも失礼しました!って対応に入ったり、一瞬空気がこわばると思うんですよね。でもそのバーテンダーはなぜか無視したんですよ。それでちょっと間を置いてから「大丈夫ですか?」って聞いてくれたんですごく自然だったんです。空気がこわばったりしなくて。

ま:そういうことできる人いいよねー

お:その時だけじゃなくて、わりかし何に関してもそんな感じですごくこちらも自然なかんじでいれたんですよ。食事もおいしいし、そこのワインだとなぜか酔っ払わなかったり。すごくいいジンを一滴だけソーダに垂らしてもらったやつをいただいて、このドリンクすごいですね!なんて話したり、すごく楽しく飲めて。

でもそのバーテンダーは、「いや、僕は何もクリエイティブなことはしてないんですよ。僕はお酒を作ってる生産者でもないし、料理も作ってるわけでもなくて。ただ、謙虚に来ていただいたお客さんのことを考えてるだけなんです。」って言っていたんです。

こ:すごいなー!それはかっこいい!

お:僕が「ちょっと忘年会で疲れてるんですよね、ちょっと体調が良くなくていつもならビール一杯で酔っ払うのに今日はワインをこんなに飲んでも大丈夫だなー」なんて軽く話したときも、「そりゃあ、大塚さんの顔色を見ていれば分かりますよ!」って言ってくれて。「僕らはお客さんのことを考えることが仕事なんだからなんもクリエイティブなことでもなんでもないんです」って言ってるのを聞いて、この人は接客の鏡だな!!って思ったんですよね!こう…「考える」っていうのが僕らの会社の200人近くのうち何人がそういうことをできるようになってるんだろうって、学ばせていただいきましたね。誰でも彼でもそうなるべきだってわけではなくて、それこそ何にも考えないほうがいいような人もいるんですけどね。僕の会社にも何も考えてなくて取り置きを頼まれたのにそれを別のお客さんに売ってしまったとか、とんでもないミスをしでかす人もいるんですけど。(笑)その彼は彼なりにそれでも愛されキャラというか、考えてもしょうがないというか、ミスしたことは置いておいたとしてもそんなことをしても許されるキャラっていうのはなかなかいないので、そのままでいてほしいって思うような人もいるんですけどね!

ま:取り置きを売っちゃうのはまずいよね!でもたまに普通の人では考えられないようなことをしでかす人がいるけど、その人はその人なりの別の良さがあるのよねー

お:そうなんですよ。だからそういう人を覗いた99%くらいの人が、人のことを考えて何かしたら《いいもの》に辿り着きやすいんじゃないかなって、僕は思うんですよね!

ま:本当にそうだと思うな!

あのね、僕は若い頃から「松浦さんは、よく怒ったり機嫌が良くなったりするけど、キレどころがわからない」って言われてるんだよね。でも、キレどころって1個しかないんだよね

こ:え…なんですか?

ま:それはね、《音楽が良くなるかどうか》ってのがキレどころなんだよね。

お&こ:あぁ〜

ま:僕じゃなくても、音楽を作ってる人はいるからさ、自分が思ってることが通らないとか自分が作ってるものを否定されると傷つくじゃない?だけど、結局今作りつつあるものがいいものになるかとか、どうしたら良くなるかとかが基準なわけよ。その為に自分もいろいろアイディアを出すんだよね。まぁ、みんなそれぞれ邪な思いもあるわけでわけの分からない人が変なアイディアを出してきたりすることもあるけど、そういうのも含めてとりあえず言うこと聞かないといけない時もあるからさ。っていうときがキレどころなんだよね!

こ:といいますと?

ま:別に、自分の意見が通らなかったから腹が立ったとか、若者の態度が悪かったから腹が立ったとか、そういうことはあんまり関係ないんだよね。

こ:あ、なんかオーディエンスから質問があるみたいですね

会場:いい音楽っておっしゃっていたんですが、いいっていうのは人それぞれだと思うんですけど、その「いい音楽」って基準はなんですか?

ま:おー!すごいぶっ込んできたねー!いいねー!

こ:すごいぶっ込みですけど、それはぜひ伺いたいですね!

ま:その話でね、ちょうどこないだスタジオで盛り上がったんだよ。なんなら、今ここに来るときの車でアシスタントとも話してたんだけど。例えばさ、コーヒーひとつにしても好き嫌いってあるじゃない?もちろん音楽でも人それぞれ好き嫌いがあっていいと思うんだよ。で、たしかに人それぞれ好き嫌いがあるのはいいんだけど、それを言うことや思うこととか、表現することも自由なのよ。

だから、「私は猿田彦珈琲が好きじゃない」て表現するのもいいと思うんだよ。

お:そうですね

ま:でもその中で一番違うのは、《我々はプロだ》ってところなんだよね。

音楽を聞く人はいろんなレベルで、いろんな耳で、いろんな気分で、いろんな年齢の人が聞いてるわけでしょう?要するにイヤホンも安いものからオーディオマニアみたいなすごいやつを使う人がいたりするわけで。コーヒーもドリップ式がいいって人もいれば、エスプレッソがいいって人もいたり。もっと言えば、野外で飲むのがいいって人とか、はたまた家でのんびり飲むのがいいって人とか、いろいろじゃない?豆も入れ方もいろいろあるからさ。

でも、こちら側はプロなので、そのことばっかり朝から晩まで考えてるし、何十年も同じことをやってるわけなのよ。

だからこそ、僕は音楽家だから耳も良くなるし音楽の構造や楽器の特性とか音質のこととか、

いろんなことをたくさん知っていて、その上で自分の美意識があるんだよ。

でね、プロだからそのクオリティーを上げる努力をいつもしなきゃいけないんだよ。

していかなきゃいけないんだよ。そういった基準に基づいて《いいもの》っていうのを

世の中にお届けする義務があるわけで。

例えばね、アフリカのどっかの村に住んでいたらそこにある民族音楽以外聞くチャンスが

ないかもしれないわけじゃん。急にそういう人に自分のいいと思ったアーティストを聞かせても、

「これのどこがいいって思うのか訳が分からない」ってなると思うし、なっていいと思うんだよね。

だって聞き慣れてないし知らないものだから当たり前なんだよね。それでも僕らはプロなので、みんなに聞いてもらう為に音楽を作ってるんですよ。つまり、少しでも世の中の音楽の当たり前が《いいもの》であるように、《いいもの》で溢れるように作らなきゃいけない義務があるわけですよ。すごい下手ですごいつまんない音楽しか世の中になかったら、それがみんなの基準がその程度の音楽になっちゃうんだよね。そんな音楽だったら、みんな音楽を好きにならないでしょう?素敵な音楽がいっぱいあるからもっと聞きたくなるし、もっと探したくなるしもっと幸せになりたくなるでしょう。

つまり、僕らはプロなのでそれを作ってる側なんですよ。同時に聞く側でもあるけどね。少しでもみんながいい耳になって幸せになってもらわないと、みんなが音楽を嫌いになってしまうから。そうならないように、毎日《いいもの》を作ろうとしてるんだよね。その為には自分の耳や感性やいろんなものを少しでも今日の自分が昨日の自分よりいいものになるように頑張らなきゃいけないわけですよ。珈琲も一緒だよね?

お:まさしくその通りです。僕も少しだけ喋ってもいいですか?

こ:どうぞどうぞ!

お:何を言いたいか忘れちゃいそうなんで、先に結論をいいますと「対価の話」をしようとしてるんですけど。半分ギャグで聞いて欲しいんですけど、ある創作料理屋さんに先日行ってきたんです。そこって結構有名で評判がいいところだったんで、ここからちょっと悪口になっちゃいますが、評判のいいお店って、大した人は来ないなって思っちゃったんですよ。そこに連れて行ってくれた人のことも大好きなんですけど、彼がここが東京で一番のお店だって言っていてそれは違うだろって思ってしまったんです。だって、美味しいと思う料理もありましたけど味がぶつかってなにがなんだか分からない料理もあって。少なからず僕は珈琲を売りにする仕事をしていく中で、いろんなところでいろんな人と関わらせていただいているので、グルメだとかではないにせよ味がぶつかってるもの、味が広がってるものっていうのは分かるんですよ。そういうものって音楽にもありますよね?

ま:そうだね、あるね。

お:そういうものを感じて、シェフと話してみたりして、やっぱり《いいもの》に出会うんと思うんですよ。僕らで言うと目指しているものは、透明感があって甘い感覚のものが後味とか余韻がいいって思っているのでそれが絶対条件なんですよ。そういったこだわりの中でどんな広がりがあるかというのが珈琲でも料理でも大事だと思うんです。でもいくらでも組み合わせがあるんですけど、例えば、絵の具で赤黄青緑…っていろんな色を混ぜちゃうと黒に近くなりますよね?料理でも同じことが言えると思っていて。中には、そういったいろんなものを混ぜることがおもしろおかしくても料理として成り立っているものもあるんですけどね。でもそれを分かっていないで混ぜちゃうと色ボケしちゃうので、そうなるくらいならいろんな色を使わないほうがいいわけですよね。で、連れて行っていただいたお店でも正直それを感じたので、ここが東京1だなんて…って思っちゃったんです。普通に食べていたらもちろん美味しいんですけど、僕は「おしゃれなお店だなぁ」くらいにしか思わなかったので、東京1だっていう評価だけが高くなっちゃってるのかなーって。あまり悪くは言いたくないんですけどそういった形で《いいもの》が決まってしまうこともあるんだなって感じましたね。

こ:そういうこともあるんですねー。先ほどの「対価の話」っていうのはどういった話ですかね?

お:あ、ありがとうございます(笑)

「対価の話」はですね、僕は経営者として従業員をたくさん雇ってるじゃないですか。アルバイトなら1,000円弱のお給料で雇っていて、珈琲は1杯400円ちょっとするんですけど、原価で考えると4杯分くらい売らないと1人のお給料にもなりませんってことになるんです。単純に考えると、1人が4杯は売らないとその人は会社にとってなんのメリットもないって話になるんじゃないですか。いるだけで自分の分しか得られない人ばっかりだと困っちゃうんですよね。でもそういう時に、僕の会社はチームを構成してやっているので、1人が自分だけよければいいって考えでやるんではなくてみんなで助け合ってやっていけるように指導してるんです。よくサッカーに例えて話すんですけど、1人だけではなくて、誰かしらが犠牲心をもって行動すれば結果はちゃんと自分に返ってくる仕事ができるようになるはずなんですよね。正直、1杯400円の珈琲を売るのは3〜4万のやりとりをする商売とはわけが違うので、僕らはお客様を満足させて楽しい時間を味わってもらえるようにっていうことを、いかにたくさんのお客様に与えられるかが大事だと思うんです。たくさん売らなきゃいけなって商売っ気のある考えでもあるんですけど、また来て欲しいなって思いを込めながら接客してるはずなんですよ。珈琲を売るっていう仕事ということだけでなく、心の奥でまた楽しみに来てくださいねって気持ちがあるはずなんです。それが結果的に対価をもらう人になっているはずなんです。

僕らも珈琲のプロフェッショナルなので、常にそういった誠意を込めてやっているし、《いいもの》っていうものを伝える為には真面目に謙虚に珈琲を知っていないといけないんですよね。謙虚にっていうのは、僕らは珈琲豆自体を作っている人間ではないので、それでもちゃんとしたものを伝えられるように頑張らないといけないんです。珈琲の好き嫌いもお客様それぞれあるんですけど、僕らが思う透き通った甘いものをよりよく伝えていろんな方に楽しんでもらえるようにしていきたいなーって思っていて。実際に豆自体には糖分が含まれていないので甘みはないはずなんですけど、お客様にも「なんだか甘い感じがする」って分かっていただけるときは嬉しいですね。科学的には証明できない官能的なところなんですけどね。

僕らはそういうような珈琲を作りたいねって全員が同じ方向を向いていて、いい珈琲に近づいていってるはずなんです。そう思っているからいい循環をしていい豆が入りやすくなってくるし、素材勝負なので現地に行って直接やりとりできるようになったりしてきてますね。

ま:現地までって相当だね!

お:現地の人はみんながみんなではないですけど、変な話、悪い豆をよこしてくるときもあるんですよ。でも、先をいっていて信頼関係が出来上がっている先輩たちの話を聞いたりして、そういうときに僕が適当に変な豆を選ぶと舐められてしまうので(笑)そういったときに、「あ、だませないな」って思われるようにちゃんと勉強しておくのが大事だと思っているんです。そうすると自然と《いいもの》にたどり着けるようになると思うんですけど、この話って音楽にも通じてますか?

ま:うん、通じてるね。自分のキャリアの中で試されてる時があるんだよね。「松浦君だったらどっちがいい?」とかね。それで選んでみると「ふーん、聞こえてるんだ」って言われる時もあるんだよ。そのときは怖いなー!って思うんだけど、そのあとにもっといい仕事によんでもらえたり、「あいつ、いいよ」って誰に伝えてもらえてたりしてさ。そうやって他の仕事に繋がっていくからさ。でもそれは、聞き分ける能力がないとダメだからね。聞き分ける能力がないとやっぱり舐められるし、現場でも訳分からないやつがきたぞってだけでおわっちゃうからねー。

お:まさにそうなんですよ。僕らも安くていい豆が欲しいって業者さんに頼むことがあって、その時にサンプルをもらうんですけど中には適当なものが含まれてたりするんです。でもそのサンプルが、どかってきた時にその中でも選りすぐりのものを選ぶと業者さん的には安くていいものを選ばれると商売的にはよろしくなくても、ブランド的にはやっぱり嬉しいわけですよね。僕らも「名前だけじゃないね」って現地の人に思ってもらえるのはとってもいいことなので。どこの世界でもこういうことはよくあることだと思うんですよね!そうですよね?

ま:そうだね。築地の世界とかでも全く同じことが言えると思うよ。

お:そうですよね!いや、僕って19歳くらいの時からあきさんに、なにかと「そうですよね?」って聞いちゃうんですよね!そうやって価値観を擦り合わせていくというか(笑)

こ:今まさに僕がその時期です!

ま:2人ともそんなことないでしょう?

お:いや!恐れ多くて言い切れないんですよね。言い切っちゃったけど違いますか?って気になっちゃったり…

こ:それはすごい分かる!OKをもらいたくなっちゃう!

ま:なんでよー

(会場:笑)

こ:…そんなこんなでかれこれ2時間くらい話してますね!

ま:もうそんなに?!飛んだおしゃべり3人組だね!

お:だいぶしゃべりましたねー

こ:ではここから会場からの質問タイムの時間としましょうか!何でもいいですよ!

会場:音楽にも珈琲にも関係しないんですけど。僕は話すのが苦手なんですが、

3人のようにいっぱい喋れるようになるにはどうしたらなれますか?

ま:飛んだおしゃべりさんになりたいってことか!

(会場:笑)

お:僕はそんなことないと思うんですけどね!もともと人と話すの苦手でしたから

こ:えー!それはそれで意外だなー!!

お:だってあきさんと出会った頃は僕全然でしたからね!

ま:たしかにスタバで初めて話しかけてきたときは、後ろからすごいどもりながら挙動不審な感じで話しかけてきたもんね。何かの勧誘かと思ったくらい(笑)

「何されてる方ですか?ずっと気になってたんですよね」って言われたけど、「え?なに?なに??」ってなっちゃったもん。不思議な人に話しかけられちゃったし大丈夫か?ってなったんだよ。

こ:それは急にびっくりしますねー

お:まさに暗黒時代ですね。僕、人と会話するのがだんだんできなくなっちゃった時期が3〜4年あったんですよ。ちょうどあきさんに出会った頃がそうだったんですけど、それでもこの人には話しかけなきゃ!って思ったんですよ!スタバにいくのがリハビリだった時期なので

ま:そうだったんだ!でも結構喋ったよね?しかも、卒論とか読ませてもらったよね?哲学に関するめっちゃ分厚いやつでさ、スタバで渡されても読み終われないものだったから預かって読んだことあったよね

お:そうですね。あのときはありがとうございます!(笑)

(会場:笑)

お:もう、どうしてもこの人に僕のことを理解してもらいたいんだって気持ちがいっぱいだったんですよ。なんか、めんどくさいなって思いながらも受け入れてくれる人がいて、ちゃんと導いてくれてるわけじゃないですか

ま:いや、導いてはないけどね…(笑)

お:いやいや、でもいっぱい喋ってくれるわけですよ。こうだよね、そうだよねってやりとりをたくさんしてくれて。すると、だんだん自分にも自信がついてくるから喋れるようになってきたんだと思うんですよね。

ま:そういうことか。たしかにね。

お:やっぱり言い切れるって大事じゃないですか。なんでも言い切っちゃっただめだとも思ってるんですけどなるべく言い切れるようにしたほうがいいから。でも自分1人だと間違っちゃうことだってあるから人と話すのは大事かなって思います。

こ:苦手分野を克服したわけですね。すごいなー

ま:僕もちょうどこないだその話になったな。ほらさ、コンピューターが発達したことで音楽にはほとんど悪い影響しかなかったんじゃないかって思ってさ。いいこともいっぱいあるんだけどね!でもコンピューターってあくまで道具だから、それをどうやって使うかが大事なわけで。別にコンピューターを使うなって言ってる訳じゃないんだけどね、実際自分も使ってるからさ

こ:うんうん、なるほど

ま:それでね、コンピューターのいくつかある弊害の中でひっかかってるのは、人と会わなくなったことなんだよね。この話は松浦堂を始めたきっかけでもあるんだけど。

コンピューターをやるばっかりになって人と会わなくなるとコミュニケーションがとれなくなるじゃん。音楽を作ろうと思っていろんなことをやっていく中でコミュニケーションが一番大切なのにさ。みんな自分のことしか考えなくなってさ、大塚君がさっき価値観を擦り合せるって言っていたけど価値観を押し付ける人ばっかりになっちゃうわけよ。コンピューターのせいで。

例えばさ、コンピューター頼りの人と話してると、「この音はこうです」って言ってることが「君が言ってるそのレベルは僕の思ってる音の半分以下しが聞こえてない程度だよね」ってことがあるんだよね。だからその人に付き合ってあげて、耳がよくなるまで待たなきゃいけないんだよね。それで、自分なりに結論にたどり着いて「これがいいと思うんです」っていうのが、僕が最初に言ったやつじゃん!ってなるわけよ。それについてすみませんって一言もないの?ってなるし、結局じゃあやってみようかって付き合ってあげるけどさ。

人ってそれぞれ器みたいなのがある訳じゃない?そのキャバシティを広げたいって思ってるはずなんだよね。僕自身もそうだし。でも知らないことに直面した時にどうしてみんな自分の器とかキャバシティに変換して物事を考えるのかなって。そもそも知らないことって自分の器に収まりきらないことに遭遇したってことなんだから、自分の知ってることの器に収めようとしても入らないわけじゃない?

こ:おっしゃるとおりですね!

ま:だよね?だから僕は知らないことに出会った時にいつもそれを感じていて、どうすんだこれ!とりあえず、浴びてみてから考えるかってなるわけよ。

お:僕もその知らないことに対する経験があるんですよ。ブラジルにいるすごく有名な日本人のバイヤーさんがいて、その方と6日間くらい行動を共にしていろんな豆の試飲をしたことがあって。その時に彼がとても高得点をつけた豆を僕は低評価にしてしまって。でも「あの豆は採れたてだから難しいところだよねー。大丈夫だよ。」って言われたんですよ。でもやっぱり納得いかなくてもう1回勉強してきてきていいですかって試飲しなおしたりしてこれは高得点のものなんだってあとから分かったんです。他のブラジル人の方にも同じように大丈夫だってことを言われて気持ちはすごく救われたんですけど、すごく悔しくて。人生において、後悔ってのとは違うんですけど自分はまだまだ未熟だなって思わされたし今後何十年経ってもあんなことあったなぁって思う出来事だったので、すごくいい経験だ学ばさせていただいたと思ってます。

ま:僕もね、そういう経験はいっぱいしたんだよね。「松浦はどう思うの?」って聞かれて答えたのに、「ふーん、そうなんだ」って感じにスルーされてそのあと全然違うことされたりしてさ。うわ、僕の意見はぶっとばされた!全然お呼びでなかったんだな…ってなるんだけど、そのあとも何か咎められる訳でもなくその場にいて、一緒に作っていくことを進行していくうちに自分の言ったことが間違っていてその先のことが見えてない発言だったんだって分からせてくれるんだよね。だけど、一応意見は聞いてくれてあとあと気づかせてくれるんだなって。あとはこちら側がなんでスルーされたのかとか、こういうことだったんだって自分で気づかせてくれるんだよね。自分で気づかないといけないんだよ。

お:なんか、僕流なんですけど、猿田彦珈琲がわりかし有名に理由があるんです。当時は売れたいとかそういうのを考えてなくて、明日のご飯を生き繋ぐためくらいにか思ってなかったんですけど、まわりの大人が引き上げてくれたんです。あきさんもその一員なんですけど、より良いものにするためにいろんな助言をくれたり宣伝してくれていたので、すごく大きい力になったしだからこそ今があると思うんですよ。そういう方達に僕は正直でいたいですし、そうすることで相手も僕に正直になってくれて、違うことが違うって指摘してくれてたりいい方向へ導いてもらっていると思ってるんですよね。だからこそ、僕も自分の意見を言いやすくて話しやすい環境が出来上がってきたのかなぁって感じます。

ま:今、突然気づいたことがあるんだけどさ。いいかな?

こ:なんでしょうか??

ま:僕らの共通項はさ、《怒られ上手》だなって思ったんだけど

こ&お:あぁ〜、たしかに(笑)

ま:ピアノを習っていた先生がいたんだけどね、だいぶ経ってから同じ先生に習ってる人と話す機会があって。あの方はすごく厳しくて怖いですよねって言われたんだけど、僕自身は当時ちっともそんなこと思ってなくてさ。だいぶ厳しくなって変わったのかなーなんて思ってたんだよ。それで、ある日スタジオに入ってた時にたまたま隣のスタジオにその先生がいて、偶然再会したんだよね。だから「最近だいぶ厳しくなって変わったんじゃないの?」って言ってみたら驚愕する言葉を言われてさ。「あなたばかじゃないの?」って

こ:それはどうして…(笑)

ま:なんかね、「私自身は何も変わってないし、あなたには人一倍厳しくしていたし、たくさんおこっていたはずなのに、当時のあなたはなるほどねー!って感じで、1人で笑ってたのよ。あなたおぼえてないの?!」って言われて、そこで厳しくされてたんだって気づいたんだよね!僕的にはすごい感心することがたくさんだったから怒られてる気なんてこれっぽっちもなかったってことなんだよね。

お:いや、でも僕もそういうことありますね。

ま:そうだよね?めげないで感心ししゃうタイプなんだろうね。

お:僕はあきさんほどクレイジーじゃないですけど…

(会場:笑)

お:僕はそれこそ、すみませんとか謝ったりすることもありますけど。でも基本的には僕の世界で僕以上に怒られてる人はみたことないですね!

ま:そうだよねー。前にさ、そんなに怒られて嫌にならないの?って聞いたら、怒られるの好きなんですよね!って言ってたもんね。

お:そんなこと言ってることもありましたね!僕的には無視されるよりは…(笑)怒られる方が断然ましだと思うんですよね。僕もあきさんみたいに無視されたり、干されてしまうこともあったので。それに比べたら、怒られるとか指摘されるっていうのは嬉しいことだし光栄だとすら思ってしまいますねー。以前、何かの公演で300人くらいいるところで15分くらい怒られ続けたことがあるんですけど、そのときはひたすらすみませんってことしか言えなくて。でもその時怒ってくれた方には今ではめちゃめちゃ可愛がられてたりしてますからね。

ま:僕もね、某有名ドラマーにこてんぱに怒られたことがあるんだけど、その人にあるとき謝られたもん。今では時間が合う時にご飯に行こうかって連絡とるほど仲良しになんだけど、急に「僕ね、当時松浦くんのことをいじめてたの。ごめんね」って言われてさ。でもね、それを聞いて辛いのは、その人が怒ってたことってすごく的を得ていたことばかりだったんだよね。だから僕は謝られても全然恨んでないし気にしないでいいって思っちゃってさ。

お:そういうことがあると思うんですけど、怒られた時にふてくされちゃう人っているじゃないですか。そういう人は伸びないだろうなって思いますね。普通だったら怒られたらへこんでる暇もないはずなんですよ。あきさんほどでなくても、なるほどなって受け入れられる体制でいるのが大事なんじゃないかと思うんです。つい昨日の夜中もある従業員の悩み相談を受けてたんですけど

ま:昨日の夜中?!ずいぶん近々の話しだね!

お:夜中にやめてよって思ったんですけどね(笑)

彼はすごくリスペクトしている有名な珈琲屋さんの人がいて、その人は僕のことを非難する人なんですね。その非難はべつにイラっとするとかじゃなくちゃんと受けいけられることなんですけど。そのリスペクトする人の言葉がすごく好きで、彼のようなバリスタになるかどうしたらいいかって相談だったんですが、そうなりたいなら勝手になればいいじゃんって話をしていたんです。キャリアとかいろいろとあるみたいだけど本当にしていることかって言ったら実際はそうじゃないんですよ。キャリアを勝手に作ってるだけだし、ただのブランディングだったりするんですよ。だから、その従業員に「その人は本当に楽しいことをしてると思う?だとしたらこんなに老けないでしょう」って言って5年前の写真と比べたりして。僕もその人を参考にしていた頃もあったんですけど、あるとき不意に気づいちゃったんですよ。この人は全然珈琲のこと分かっていないし、これから先も勉強する気ないなって。だからその人のことは好きだし参考にしていたし綺麗になれないけど、こういう人になっちゃいけないなって話を昨日してたんです。

なんで夜中にそんな相談を受けても真面目に取り合ったかっていうと、その従業員もかなり周りから非難を受けていたんですよ。それで彼はふてくされちゃったんです。全部聞かないって感じで我が道を行くようになってたんですけど、それでも周りをすごい気にしていて疲れきっちゃっていることを僕は見透かしていたので

ま:そりゃそうだよね。社長だもんね

お:たまに行っていじめてやろうかとか思うんですけどね。ふざけてですけど(笑)でも彼がふてくされずに周りの意見を受け入れて入られたとしたら、彼自身の人生はもっと楽で、楽しいものになっていたんじゃないかなって思うわけですよ。

ま:それはそうだよねー。もったいないなぁ

お:それとは別で、1人だけふてくされない人がいて、その人は昔かなり喧嘩していた別の珈琲屋さんの人なんですけど、その人のことはかなり盟友だと思っていて。なんでかっていうとその喧嘩って今の東京の珈琲屋さんを盛り上げた裏の要因になっているんですよ。ついこないだ猿田彦珈琲が5周年だってFacebookにあげたらちょうど連絡が来て、「お互いあの頃の話覚えてる?」って言われたんですよ。彼は本当に珈琲が好きだって知っているし、彼もすごい非難を受けていたんです。それでもちゃんと受け入れて流して全部しっかりやってきいるからすごく大事な盟友だと思っていて連絡が来て嬉しかったんです。

やっぱり非難された時にふてくされてすぱっと切って自分の我が道で行こうって小さな世界にいくのか、ちゃんと受け入れた上で行動するのかっていうのはすごく大事なことなんじゃないかなって思うんですけどどうですかね?

ま:いや、おっしゃる通りだと思うよ。

あれ、小松全然喋らないけどどうしたの?そんなことない?

こ:はい!完璧に参加者になっちゃってました。聞き入ってマイク持ってること忘れてました(笑)

ま:そうだよね。話しかけたのにマイクあげてなかったもんね

(会場:笑)

こ:すみません。2人のいい話を聞き入っちゃってました!そんなこんなでもうだいぶいいお時間になってしまいました。皆様長い間お付き合いいただきありがとうございました!

大塚さんも素敵なお話をありがとうございます!きっとみなさん帰り道に

猿田彦珈琲に行きたくなってるんじゃないですかね?

ま:本当に長い間喋りっぱなしでしたねー。お疲れ様でした

お:楽しかったです!ありがとうございました!

こ:次回の松浦堂にも皆様、また来てくださると嬉しいです。ありがとうございました!

猿田彦珈琲ロゴ.png

​後

​松浦堂Meeting Vol.6

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